インフラエンジニアという職種は、IT業界の中でも縁の下の力持ちとして知られています。システムやサービスが安定して動き続けるためには、彼らの存在が欠かせません。しかし、実際にインフラエンジニアがどのような仕事をしているのか、また年収はどの程度なのか、具体的なイメージが湧きにくいという声も多く聞かれます。本記事では、インフラエンジニアの仕事内容から年収の相場、年収を上げるための方法まで、できるだけ具体的にわかりやすく解説します。これからIT業界を目指す方やキャリアアップを考えている方にとって、参考になる情報をお届けします。
インフラエンジニアとはどんな仕事？
インフラエンジニアは、ITシステムの基盤部分を支える技術者です。現代の社会は、インターネットやクラウドサービス、スマートフォンなど、さまざまなITインフラに支えられています。インフラエンジニアは、こうしたインフラを設計し、構築し、運用・保守する役割を担っています。たとえば、企業のサーバーやネットワークの設計、ストレージの管理、セキュリティ対策、障害対応などが主な業務です。
インフラエンジニアの仕事は、表に出ることが少ないものの、システムが止まらずに動き続けるためには不可欠です。たとえば、ECサイトやSNS、オンラインゲームなど、日常的に使われているサービスの裏側には、必ずインフラエンジニアの存在があります。彼らが安定したシステム環境を作り上げることで、私たちは安心してサービスを利用できるのです。
インフラエンジニアの主な役割
インフラエンジニアの主な役割は、大きく分けて「設計」「構築」「運用・保守」に分類できます。まず、システムの要件や予算、利用目的に応じて最適なインフラを設計します。設計段階では、どのようなサーバーやネットワーク機器を使うか、どのように冗長化やバックアップを行うか、といった点を細かく検討します。
次に、設計に基づいて実際にシステムを構築します。物理的なサーバーやネットワーク機器を設置したり、仮想化技術やクラウドサービスを活用したりすることも多いです。最近では、AWSやAzure、Google Cloudといったクラウドサービスを使ったインフラ構築が主流になっています。
運用・保守のフェーズでは、システムが安定して稼働し続けるように、定期的なメンテナンスや障害対応を行います。障害が発生した場合には、迅速に原因を特定し、復旧作業を進めます。また、セキュリティ対策やパフォーマンスの最適化も重要な業務です。
他のエンジニア職との違い
インフラエンジニアと他のエンジニア職との違いは、担当する領域や求められるスキルにあります。たとえば、アプリケーションエンジニアは主にソフトウェアやアプリの開発を担当しますが、インフラエンジニアはシステム全体の基盤を支える役割を担います。
また、ネットワークエンジニアやサーバーエンジニアといった専門職もありますが、インフラエンジニアはこれらを横断的に担当することが多いです。最近では、クラウド技術や自動化ツールの普及により、インフラエンジニアにもプログラミングやDevOpsの知識が求められるようになっています。
インフラエンジニアの年収はいくら？
インフラエンジニアの年収は、経験年数やスキル、勤務先の規模や地域によって大きく異なります。ここでは、平均年収や年収の分布、初任給について具体的に見ていきます。
インフラエンジニアの平均年収
2025年時点での日本国内におけるインフラエンジニアの平均年収は、おおよそ450万円から600万円程度とされています。これは、求人情報サイトや転職エージェントが公開しているデータをもとにした数字です。もちろん、企業や地域、個人のスキルによって前後しますが、IT業界全体の平均と比べても遜色のない水準です。
企業規模が大きいほど年収も高くなる傾向があり、特に大手IT企業や外資系企業では700万円を超えるケースも珍しくありません。一方で、中小企業や地方企業の場合は400万円台前半から500万円前後が多い印象です。
年収の分布とボリュームゾーン
インフラエンジニアの年収分布を見ると、最も多いのは400万円台後半から500万円台前半のゾーンです。このレンジに全体の約3割から4割が集中しています。次いで多いのが500万円台後半から600万円台前半で、ここにも多くのインフラエンジニアが含まれます。
一方、経験年数が浅い場合や未経験からの転職の場合は、300万円台後半から400万円台前半に位置することもあります。逆に、10年以上の経験を持ち、マネジメントやスペシャリストとして活躍している人材は、800万円以上の年収を得ていることもあります。
年収分布をまとめた表を以下に示します。
| 経験年数・ポジション | 年収の目安 |
|---|---|
| 未経験・新卒 | 300万～400万円 |
| 経験3年未満 | 350万～450万円 |
| 経験3～5年 | 400万～550万円 |
| 経験5～10年 | 500万～700万円 |
| マネジメント・スペシャリスト | 700万～900万円以上 |
このように、経験やスキルによって年収の幅が広いのが特徴です。
初任給や未経験からの年収
未経験からインフラエンジニアとして就職した場合、初任給はおおむね20万円台後半から25万円程度が一般的です。年収に換算すると、300万円台後半から400万円台前半となります。新卒の場合、IT業界全体の初任給平均とほぼ同等か、やや高めの水準です。
未経験からの転職の場合、最初の年収は低めに設定されることが多いですが、実務経験を積むことで年収アップが見込めます。特に、資格取得やスキルアップを積極的に行うことで、2～3年で年収が50万円～100万円程度上がるケースもあります。
年収に影響する要素
インフラエンジニアの年収は、さまざまな要素によって左右されます。ここでは、主な影響要因について詳しく解説します。
経験年数とスキル
経験年数は年収に直結する大きな要素です。インフラエンジニアの場合、1年目と5年目、10年目では求められる役割や責任が大きく変わります。たとえば、1年目は先輩の指導を受けながら運用・保守業務を担当することが多いですが、5年目になると設計や構築、プロジェクトリーダーの役割を任されることも増えます。
また、サーバーやネットワーク、クラウド、セキュリティなど、幅広い分野の知識やスキルを身につけることで、より高い年収を目指すことができます。特定の分野に特化したスペシャリストや、マネジメントスキルを持つ人材は、年収アップのチャンスが広がります。
資格の有無と年収の関係
インフラエンジニアにとって、資格はスキルや知識の証明となります。代表的な資格には、CCNAやCCNP（シスコ技術者認定）、LPIC（Linux技術者認定）、AWS認定資格などがあります。これらの資格を取得することで、転職時や昇給時に有利になることが多いです。
たとえば、AWS認定ソリューションアーキテクトやネットワークスペシャリストなどの上位資格を持っている場合、年収が50万円～100万円ほど上乗せされるケースも見られます。資格手当を支給する企業も多く、毎月数千円から1万円程度の手当がつくこともあります。
勤務先の企業規模や業界
勤務先の企業規模や業界も、年収に大きな影響を与えます。大手IT企業やSIer（システムインテグレーター）、外資系企業では、給与水準が高い傾向があります。特に、金融や通信、インターネットサービスなど、ITインフラへの投資が大きい業界では、高年収が期待できます。
一方で、中小企業やスタートアップ、地方企業の場合は、年収水準がやや低めになることが多いです。ただし、企業規模が小さい分、幅広い業務を経験できる、裁量が大きいといったメリットもあります。
地域による年収の違い
インフラエンジニアの年収は、勤務地によっても差があります。東京都や神奈川県、大阪府などの都市部は、求人件数が多く、年収水準も高めです。特に東京23区内では、年収が50万円～100万円程度高くなる傾向があります。
一方、地方都市や郊外では、求人件数が少ないこともあり、年収もやや低めに設定されることが多いです。ただし、リモートワークの普及により、地方に住みながら都市部の高年収案件に参画するケースも増えています。
インフラエンジニアのキャリアパスと年収の変化
インフラエンジニアは、キャリアを重ねることで年収が大きく変化していきます。ここでは、ジュニアからシニア、マネジメントやスペシャリスト職へのキャリアパスと年収の推移について詳しく見ていきます。
ジュニアからシニアまでの年収推移
インフラエンジニアとしてキャリアをスタートした場合、最初の数年は運用・保守業務を中心に経験を積みます。この段階では、年収は300万円台後半から400万円台前半が一般的です。3年目以降になると、設計や構築といった上流工程を担当する機会が増え、年収も400万円台後半から500万円台に上昇します。
5年以上の経験を積み、システム全体の設計やプロジェクトリーダーを任されるようになると、年収は550万円から650万円程度まで伸びることが多いです。さらに、10年以上の経験を持ち、マネジメントやスペシャリストとして活躍する場合は、700万円以上の年収も十分に狙えます。
マネジメント職・スペシャリスト職の年収
インフラエンジニアのキャリアパスには、大きく分けて「マネジメント職」と「スペシャリスト職」があります。マネジメント職は、プロジェクトマネージャーや部門長など、チームやプロジェクト全体を統括する役割です。この場合、年収は800万円から1,000万円を超えることもあります。
一方、スペシャリスト職は、特定分野の高度な技術力を武器に活躍する道です。たとえば、クラウドアーキテクトやセキュリティエンジニア、ネットワークスペシャリストなどが該当します。スペシャリスト職も高年収が期待でき、700万円から900万円以上の年収を得ている人も少なくありません。
フリーランスや副業の場合の年収
近年、フリーランスとして働くインフラエンジニアも増えています。フリーランスの場合、案件単価や稼働日数によって年収が大きく変動しますが、月額報酬が40万円から80万円程度の案件が多いです。年間に換算すると、480万円から960万円程度になります。
また、副業としてインフラエンジニアのスキルを活かすケースも増加しています。副業案件は、リモート対応や短期間のプロジェクトが中心で、月数万円から十数万円の収入を得ている人が多いです。副業を組み合わせることで、年収を効率的に伸ばすことも可能です。
インフラエンジニアが年収を上げる方法
インフラエンジニアとして年収を上げるためには、いくつかのポイントがあります。ここでは、スキルアップや資格取得、転職、副業など、具体的な方法について解説します。
スキルアップで目指せる年収
インフラエンジニアが年収を上げるためには、スキルアップが欠かせません。たとえば、オンプレミス環境だけでなく、クラウドサービスや仮想化技術、コンテナ技術（DockerやKubernetesなど）を習得することで、より高単価の案件に参画できるようになります。
また、プログラミングや自動化ツール（AnsibleやTerraformなど）の知識を身につけることで、DevOpsエンジニアとしてのキャリアも広がります。こうしたスキルを習得することで、年収が50万円から100万円以上アップすることも珍しくありません。
資格取得による年収アップ
資格取得は、年収アップのための有効な手段です。たとえば、AWS認定資格やGoogle Cloud認定資格、Microsoft Azure認定資格など、クラウド関連の資格は特に評価が高まっています。これらの資格を取得することで、転職時や昇給時に有利になるだけでなく、資格手当が支給されることもあります。
また、ネットワーク系の資格（CCNAやCCNP）、Linux系の資格（LPICやLinuC）も根強い人気があります。資格取得の際には、実務で活かせる知識やスキルを重視し、日々の業務と連動させて学ぶことが大切です。
転職で年収を上げるポイント
転職は、年収アップを実現するための有力な方法です。特に、現在の職場で年収が頭打ちになっている場合や、より高いスキルを活かせる環境を求めている場合は、転職を検討する価値があります。
転職活動を行う際には、求人情報サイトや転職エージェントを活用し、自分のスキルや経験に合った求人を探しましょう。また、面接では自分の強みや実績を具体的にアピールすることが重要です。転職先の企業規模や業界、勤務地なども年収に大きく影響するため、複数の選択肢を比較検討することが大切です。
案件選びや副業の工夫
フリーランスや副業として働く場合、案件選びが年収に直結します。高単価の案件を獲得するためには、専門性の高いスキルや資格を持っていることが有利です。また、リモート案件や短期間のプロジェクトを組み合わせることで、効率的に収入を増やすことも可能です。
副業の場合、本業と両立できる範囲で無理なく案件を選ぶことがポイントです。たとえば、夜間や休日に対応できる案件や、スポット的な業務を選ぶことで、安定した収入を得ることができます。
インフラエンジニアの年収に関するよくある誤解
インフラエンジニアの年収については、さまざまな誤解が存在します。ここでは、代表的な誤解について解説します。
インフラエンジニアは低年収なのか？
インフラエンジニアは、他のIT職種と比べて年収が低いというイメージを持たれることがあります。しかし、実際には平均年収はIT業界全体の水準と同等か、やや高い水準にあります。特に、クラウドやセキュリティなどの分野で高い専門性を持つ人材は、高年収を得ているケースが多いです。
この誤解は、運用・保守業務が中心のポジションや、経験年数が浅い場合に年収が低めに設定されることが影響していると考えられます。スキルアップやキャリアアップを通じて、十分に高年収を目指せる職種です。
年収が上がりにくい理由は本当か？
インフラエンジニアは年収が上がりにくいという声もありますが、これは必ずしも正しいとは言えません。確かに、同じ業務を長期間続けている場合や、スキルアップや資格取得を怠っている場合は、年収が伸び悩むことがあります。
しかし、クラウド技術や自動化、セキュリティ分野など、需要が高まっている分野に積極的に取り組むことで、年収アップのチャンスは十分にあります。転職や副業を活用することで、年収を大きく伸ばしているインフラエンジニアも多く存在します。
他のITエンジニア職との年収比較
インフラエンジニアと他のITエンジニア職との年収を比較すると、アプリケーションエンジニアやWebエンジニアとほぼ同等か、やや高めの水準にあります。特に、クラウドやセキュリティ分野に強みを持つインフラエンジニアは、高年収を得ていることが多いです。
一方で、AIエンジニアやデータサイエンティストなど、近年需要が急増している職種は、インフラエンジニアよりも高年収の傾向があります。ただし、インフラエンジニアは安定した需要があり、長期的に安定したキャリアを築きやすいという特徴があります。
| 職種 | 平均年収（目安） |
|---|---|
| インフラエンジニア | 450万～600万円 |
| アプリケーションエンジニア | 450万～600万円 |
| Webエンジニア | 400万～550万円 |
| AIエンジニア | 600万～900万円 |
| データサイエンティスト | 600万～900万円 |
まとめ
インフラエンジニアの年収は、経験やスキル、勤務先によって大きく異なりますが、平均して450万円から600万円程度が一般的です。資格取得やスキルアップ、転職や副業などを通じて、年収アップのチャンスは十分にあります。クラウドやセキュリティなど、需要が高まっている分野に積極的に取り組むことで、さらに高い年収を目指すことも可能です。安定したキャリアを築きたい方にとって、インフラエンジニアは魅力的な選択肢のひとつと言えるでしょう。
