Webサイトは現代のビジネスや個人活動において欠かせない存在となっています。しかし、Webサイト制作の全体像を把握していない方にとっては、どこから手をつけていいのか分からないことも多いでしょう。
Webサイト制作には、計画から公開まで様々な工程があります。この記事では、Webサイト制作の流れを初めての方でも理解できるように解説します。サイト制作を依頼する側も、自分で作る側も、全体のプロセスを知ることで、スムーズに進めることができるようになります。
これから説明する内容は、個人のブログサイトから企業の公式サイトまで、基本的にはどのようなWebサイトを作る場合にも当てはまる流れです。それでは、Webサイト制作の世界へ一緒に踏み出していきましょう。
Webサイト制作の準備段階
Webサイト制作を始める前に、しっかりとした準備が必要です。準備が不十分だと、後から大きな修正が必要になったり、予想外の費用がかかったりすることがあります。
目的とゴールの設定
まず最初に考えるべきは「なぜWebサイトを作るのか」という目的です。会社の認知度を上げたいのか、商品を販売したいのか、情報を発信したいのか。目的によって、サイトの構成や必要な機能が変わってきます。
例えば、商品販売が目的なら、商品ページや決済システムが必要になります。情報発信が目的なら、ブログ機能や記事の検索機能が重要になるでしょう。目的を明確にすることで、必要な要素が見えてきます。
また、具体的な成果指標も設定しておくと良いでしょう。「月間アクセス数を1000人にする」「問い合わせを月10件獲得する」など、数字で表せる目標があると、サイト公開後の評価もしやすくなります。
予算と期間の決定
Webサイト制作にかかる費用と期間は、規模や機能によって大きく変わります。シンプルな情報サイトなら数万円から、本格的なECサイトなら数百万円かかることもあります。
予算を決める際は、制作費だけでなく、サーバー代やドメイン代、更新・保守費用なども考慮する必要があります。また、制作期間も小規模なサイトなら1〜2ヶ月、大規模なサイトなら半年以上かかることもあります。
予算と期間は相互に関係しています。急いで作るとコストが上がりますし、予算を抑えると機能を限定する必要があるかもしれません。現実的な予算と期間を設定することが、スムーズな制作の第一歩です。
必要な情報の洗い出し
サイトに掲載する情報を事前に整理しておくことも重要です。会社概要、サービス内容、問い合わせ先など、必要な情報をリストアップしましょう。
特に写真や図表などは、制作段階で急に用意するのは難しいものです。高品質な画像が必要な場合は、プロのカメラマンに依頼するなど、時間に余裕を持って準備することをお勧めします。
また、競合他社のサイトを調査して、自社サイトに必要な要素や差別化ポイントを考えておくことも有効です。「このサイトのここが良い」「ここは改善できる」といった具体的な参考点があると、制作者とのコミュニケーションもスムーズになります。
Webサイト制作の基本ステップ
Webサイト制作は大きく分けて6つのステップで進みます。それぞれの段階で何をするのか、簡単に見ていきましょう。
要件定義
要件定義とは、サイトの目的や必要な機能、デザインの方向性などを明確にする作業です。クライアントと制作者が認識を合わせる重要な段階で、ここでの擦り合わせが不十分だと、後々大きな修正が必要になることがあります。
具体的には、ターゲットユーザーの特定、必要なページや機能のリストアップ、デザインの参考サイトの共有などを行います。この段階でしっかり時間をかけることで、後の工程がスムーズに進みます。
サイトマップの作成
サイトマップとは、Webサイトの全体構造を示す設計図のようなものです。トップページから各ページへの階層関係や、ページ間のリンク関係を図示します。
サイトマップを作ることで、必要なページが漏れなく含まれているか、ユーザーが目的のページに簡単にたどり着けるかなどを確認できます。複雑なサイトほど、この段階での整理が重要になります。
ワイヤーフレームの設計
ワイヤーフレームとは、各ページのレイアウトを簡略化して示した設計図です。ヘッダーやフッター、メニュー、コンテンツエリアなど、ページの骨組みを決めます。
この段階ではデザインの細部よりも、情報の配置や優先順位を考えることが重要です。ユーザーが最初に見るべき情報は何か、どのような順序で情報を提示するかなどを検討します。
デザインカンプの制作
デザインカンプとは、実際のWebサイトがどのように見えるかを示した完成予想図です。色使い、フォント、画像配置など、視覚的な要素を含めた詳細なデザインを作成します。
この段階では、ブランドイメージに合った色使いや、読みやすいフォントサイズ、魅力的な画像選びなどが重要です。デザインカンプはクライアントの承認を得てから、次のコーディング段階に進みます。
コーディング作業
デザインカンプが承認されたら、HTMLやCSS、JavaScriptなどを使って実際のWebページを作成します。この作業をコーディングと呼びます。
コーディングでは、見た目だけでなく、表示速度や検索エンジン最適化(SEO)、異なるデバイスでの表示(レスポンシブデザイン)なども考慮します。技術的な知識が必要な段階ですが、近年ではWordPressなどのCMSを使うことで、専門知識がなくても一定レベルのサイトを作れるようになっています。
サーバーへのアップロード
完成したWebサイトのデータをサーバーにアップロードして、インターネット上に公開します。この際、ドメイン(URLの「www.example.com」の部分)の設定も行います。
アップロード後は、リンク切れやレイアウト崩れがないか、各種フォームが正常に動作するかなどを確認します。問題がなければ、晴れてWebサイトの公開となります。
要件定義の重要性
要件定義は、Webサイト制作の土台となる重要な工程です。ここでの決定が、その後の全ての作業に影響します。
ターゲットユーザーの明確化
Webサイトは「誰に見てもらうか」を意識して作ることが大切です。年齢層、性別、職業、興味関心など、ターゲットユーザーの特徴を具体的に想定しましょう。
例えば、高齢者向けのサイトなら文字を大きくし、若者向けなら最新のデザイントレンドを取り入れるなど、ターゲットによって設計が変わります。また、スマートフォンでの閲覧が多いのか、パソコンでの閲覧が多いのかによっても、最適な設計は異なります。
ターゲットユーザーが明確になれば、そのユーザーが何を求めてサイトを訪れるのか、どのような情報があれば満足するのかを考えることができます。
コンテンツの決定
サイトに掲載するコンテンツ(内容)を決めることも、要件定義の重要な部分です。会社概要、サービス説明、ブログ、お問い合わせフォームなど、必要なコンテンツをリストアップします。
コンテンツを決める際は、ユーザーの視点に立つことが大切です。「自分たちが伝えたいこと」だけでなく、「ユーザーが知りたいこと」を考慮しましょう。例えば、商品の機能だけでなく、使用感や導入事例なども重要な情報です。
また、コンテンツの更新頻度も考えておくと良いでしょう。ブログなど定期的に更新するコンテンツがある場合は、更新のしやすさも設計に反映させる必要があります。
機能要件のリストアップ
サイトに必要な機能を洗い出すことも、要件定義の一部です。お問い合わせフォーム、会員登録、検索機能、多言語対応など、必要な機能をリストアップします。
機能を決める際は、必要性とコストのバランスを考えることが大切です。多くの機能を盛り込むほど制作コストは上がりますし、サイトの複雑さも増します。本当に必要な機能を見極め、優先順位をつけましょう。
また、将来的に追加したい機能がある場合は、拡張性も考慮する必要があります。後から機能を追加しやすい設計にしておくことで、将来的なコスト削減につながります。
サイトマップで全体構造を把握する
サイトマップは、Webサイトの全体像を俯瞰するための重要なツールです。適切なサイトマップを作ることで、ユーザーにとって使いやすいサイト構造を設計できます。
ページ階層の設計方法
Webサイトのページ階層は、通常「トップページ→カテゴリページ→個別ページ」という3層構造が基本です。この構造をどのように設計するかで、サイトの使いやすさが大きく変わります。
階層を設計する際のポイントは「ユーザーが3クリック以内に目的のページにたどり着けるか」です。階層が深すぎると、ユーザーは目的のページを見つけにくくなります。かといって、トップページから直接リンクするページが多すぎると、メニューが煩雑になってしまいます。
バランスの良い階層設計のためには、関連する情報をカテゴリごとにまとめ、論理的な構造を作ることが大切です。例えば、「会社情報」というカテゴリの下に「企業理念」「沿革」「アクセス」などのページを配置するといった具合です。
必要なページの洗い出し
サイトに必要なページを漏れなくリストアップすることも重要です。基本的なページとしては、トップページ、会社概要、サービス・商品紹介、お問い合わせページなどがあります。
業種や目的によって必要なページは異なりますが、ユーザーが求める情報を網羅することを意識しましょう。例えば、飲食店のサイトならメニューやアクセス情報、ECサイトなら商品カテゴリや決済方法の説明などが必要です。
また、プライバシーポリシーや利用規約など、法的に必要なページも忘れずに含めましょう。これらは直接的な集客にはつながりませんが、サイトの信頼性を高める重要な要素です。
ユーザーの動線設計
ユーザーがサイト内をどのように移動するか(動線)を考えることも、サイトマップ作成の重要な部分です。ユーザーの目的に応じた自然な流れを設計しましょう。
例えば、商品を探しているユーザーなら「トップページ→カテゴリページ→商品詳細→購入手続き」という流れが自然です。問い合わせをしたいユーザーなら「トップページ→サービス紹介→お問い合わせ」という流れが考えられます。
重要なのは、ユーザーが迷わずに目的を達成できるようにすることです。各ページには適切な「次のアクション」を示すボタンやリンクを配置し、ユーザーを誘導しましょう。例えば、商品詳細ページには「購入する」ボタン、サービス紹介ページには「お問い合わせ」リンクなどです。
ワイヤーフレームで骨組みを作る
ワイヤーフレームは、Webページのレイアウトを簡略化して示した設計図です。色や画像などの視覚的な要素を省き、情報の配置や機能の位置関係に焦点を当てます。
ワイヤーフレームの役割
ワイヤーフレームの主な役割は、サイトの使いやすさ(ユーザビリティ)を検討することです。デザインの美しさよりも、情報が論理的に配置されているか、ユーザーが迷わず操作できるかを重視します。
ワイヤーフレームを作ることで、デザイン段階に入る前に構造的な問題を発見し、修正することができます。また、クライアントとの認識合わせにも役立ちます。視覚的な要素が少ないシンプルな図なので、全体構造に集中して議論できるのです。
ワイヤーフレームは、紙に手書きしたり、PowerPointやIllustratorなどのソフトで作成したりできます。専用のワイヤーフレーム作成ツールも多数あります。複雑なサイトほど、この段階での検討が重要になります。
各ページの情報設計
ワイヤーフレームでは、各ページにどのような情報を配置するかを決めます。ヘッダー、フッター、メインコンテンツ、サイドバーなど、ページの各部分に何を表示するかを検討します。
例えば、トップページなら「ヘッダーにはロゴとメニュー、メインビジュアルには商品画像、その下に特徴紹介、さらに下に新着情報」といった具合に配置を決めていきます。
情報設計の際は、ユーザーの視線の流れを意識することが大切です。一般的に、ウェブページは左上から右下へとZ型に視線が移動すると言われています。重要な情報ほど、このZ型の流れの初期段階(左上付近)に配置すると効果的です。
優先順位の決め方
ページ内の情報には優先順位をつけ、重要な情報ほど目立つ位置や大きさで表示するようにします。優先順位の決め方には、以下のような基準があります。
- ビジネス目標との関連性:売上や問い合わせにつながる情報は優先度が高い
- ユーザーニーズ:ユーザーが最も知りたい情報は優先度が高い
- 時間的な緊急性:期間限定の情報は一時的に優先度が上がる
例えば、ECサイトなら「商品画像」「価格」「購入ボタン」は優先度が高く、「商品の詳細説明」「関連商品」は次点、「会社概要へのリンク」などは優先度が低いでしょう。
優先順位に基づいて、情報の配置(上部か下部か)、大きさ(大きいか小さいか)、視覚的な目立ちやすさ(色や囲みの有無)などを決めていきます。
デザイン制作のポイント
ワイヤーフレームで構造が決まったら、次はデザイン制作の段階です。ここでは色や画像、フォントなどの視覚的要素を加え、サイトの印象を決定づけます。
色彩計画の基本
色はサイトの印象を大きく左右します。色彩計画を立てる際は、以下のポイントを押さえましょう。
まず、ブランドカラーを基準にします。会社やサービスのロゴカラーがあれば、それを主要な色として使用します。ブランドカラーがない場合は、業種やターゲット層に合った色を選びましょう。例えば、環境関連なら緑、医療関連なら青、飲食関連なら赤や茶色が使われることが多いです。
色の組み合わせも重要です。基本的には「メインカラー」「サブカラー」「アクセントカラー」の3色程度に絞ると統一感が出ます。色相環(色を円状に並べた図)で隣り合う色を選ぶと調和した印象に、反対側の色を選ぶと鮮やかな印象になります。
また、色のコントラスト(明暗差)も考慮しましょう。特に文字と背景のコントラストは、読みやすさに直結します。白背景に薄いグレーの文字などは避け、十分なコントラストを確保することが大切です。
文字の読みやすさ
Webサイトの文字は、画面上で快適に読めることが重要です。読みやすい文字デザインのポイントは以下の通りです。
フォントの選択では、可読性の高いものを選びましょう。日本語の場合、ゴシック体(sans-serif)は画面での読みやすさに優れています。明朝体(serif)は印刷物では読みやすいですが、画面では細い線が潰れやすいため、使用する場合は大きめのサイズにするとよいでしょう。
文字サイズも重要です。本文は最低でも14〜16px程度、見出しはそれより大きくするのが基本です。特に高齢者向けのサイトでは、さらに大きめのサイズが望ましいでしょう。
行間や文字間も読みやすさに影響します。行間は文字サイズの1.5〜1.8倍程度、段落間はさらにその1.5倍程度空けると読みやすくなります。また、1行の長さが極端に長くならないよう、適切な幅に収めることも大切です。
画像の選び方と配置
画像は文字だけでは伝えきれない情報や印象を伝える重要な要素です。効果的な画像の使い方を見ていきましょう。
画像を選ぶ際は、サイトの目的やターゲットに合ったものを選びましょう。商品写真なら複数の角度から撮影したもの、人物写真なら表情が明るく自然なものが効果的です。最近は、プロが撮影した高品質なフリー素材も多く公開されているので、予算に応じて使い分けるとよいでしょう。
画像の配置も考慮すべきポイントです。大きな画像は注目を集めますが、ページの読み込み速度に影響するため、適切なサイズに最適化することが大切です。また、文章と画像のバランスも重要です。長い文章の間に関連する画像を挿入すると、読者の理解を助け、視覚的な休憩にもなります。
画像には必ず代替テキスト(alt属性)をつけましょう。これは画像が表示されない場合や、視覚障害者のスクリーンリーダーで読み上げられる文字情報です。SEO的にも重要な要素です。
コーディング作業の内容
デザインが決まったら、次はそれをWebページとして実装するコーディング作業に入ります。ここでは、HTMLやCSSなどを使って実際のWebサイトを作り上げていきます。
HTMLとCSSの基本
HTMLとCSSは、Webページを作る上での基本的な言語です。HTMLはページの構造を、CSSは見た目(デザイン)を担当します。
HTMLでは、見出し(h1〜h6)、段落(p)、リスト(ul、ol、li)、リンク(a)、画像(img)などの要素を使って、ページの骨組みを作ります。例えば、「これは見出しです」という文字を見出しとして表示するには、これは見出しです
のように記述します。
CSSでは、色、サイズ、余白、配置などのスタイルを指定します。例えば、見出しを赤色にするには、h2 { color: red; }
のように記述します。CSSは別ファイルとして作成し、複数のHTMLファイルから参照することで、サイト全体のデザインを統一的に管理できます。
近年では、HTMLとCSSの基本を理解していれば、WordPressなどのCMSを使うことで、専門的なコーディング知識がなくてもある程度のサイトを作れるようになっています。ただし、カスタマイズするにはやはり基本的な知識が必要です。
レスポンシブデザインの実装
現在のWebサイトには、パソコン、スマートフォン、タブレットなど、様々な画面サイズでの表示に対応することが求められます。これを実現するのがレスポンシブデザインです。
レスポンシブデザインでは、CSSのメディアクエリという機能を使って、画面サイズに応じてレイアウトを変更します。例えば、パソコンでは3列で表示していた内容を、スマートフォンでは1列に変更するといった具合です。
実装のポイントとしては、まず「モバイルファースト」の考え方があります。これは、最初にスマートフォン向けのデザインを作り、そこから画面サイズが大きくなるにつれて要素を追加していく方法です。スマートフォンでの閲覧が増えている現在、この考え方は特に重要です。
また、画像やテーブルなどの要素も、画面サイズに応じて適切に表示されるよう調整が必要です。画像は最大幅を指定して自動的にリサイズされるようにしたり、テーブルは横スクロールできるようにしたりします。
動作確認の方法
コーディングが完了したら、様々な環境で正しく表示・動作するかを確認します。主な確認ポイントは以下の通りです。
まず、異なるブラウザでの表示確認です。Chrome、Firefox、Safari、Edgeなど、主要なブラウザで同じように表示されるか確認します。ブラウザによって若干の表示差があるのは普通ですが、大きなレイアウト崩れがないことを確認しましょう。
次に、異なるデバイスでの表示確認です。パソコン、スマートフォン、タブレットなど、実際のデバイスで確認するのが理想ですが、ブラウザの開発者ツールを使って画面サイズを変更することでも、ある程度の確認ができます。
また、各種機能の動作確認も重要です。リンクが正しく機能するか、フォームが正しく送信されるか、動画や音声が再生されるかなどを確認します。特に入力フォームは、不正な入力に対するエラーメッセージの表示なども含めて、丁寧に確認する必要があります。
公開前の最終チェック項目
Webサイトを公開する前に、最終的なチェックを行いましょう。ここでの確認が不十分だと、公開後にトラブルが発生する可能性があります。
文章・画像の確認
まず、サイト内の文章や画像に問題がないか確認します。具体的には以下のポイントをチェックしましょう。
文章については、誤字脱字や文法の誤りがないか、内容に矛盾や古い情報がないかを確認します。特に重要なのは会社名や電話番号、住所などの基本情報です。これらに誤りがあると、ビジネス上の大きな問題になりかねません。
画像については、適切なサイズに最適化されているか、著作権の問題がないか、代替テキスト(alt属性)が設定されているかを確認します。特に他者の画像を使用する場合は、利用許諾を得ているか、クレジット表記が必要かなどを確認することが重要です。
また、全体的な統一感も確認しましょう。フォントや色使い、余白のとり方などが、ページによってバラバラになっていないかをチェックします。
リンク切れのチェック
サイト内のリンクが全て正しく機能するかを確認します。リンク切れ(クリックしても目的のページに飛ばない状態)は、ユーザー体験を大きく損ねます。
内部リンク(自サイト内のページへのリンク)と外部リンク(他サイトへのリンク)の両方をチェックしましょう。特に、サイトマップを変更した場合や、外部サイトのURLが変更された場合にリンク切れが発生しやすいです。
リンクチェックは手動で行うこともできますが、サイトが大きい場合は専用のツールを使うと効率的です。「Broken Link Checker」などのWordPressプラグインや、オンラインのリンクチェックツールを活用しましょう。
表示速度の最適化
Webサイトの表示速度は、ユーザー体験とSEOの両方に影響する重要な要素です。公開前に表示速度を確認し、必要に応じて最適化しましょう。
表示速度を確認するには、Google PageSpeed InsightsやGTmetrixなどのツールが便利です。これらのツールでは、現在の表示速度と改善点が示されます。
速度改善の主なポイントは以下の通りです。
- 画像の最適化:適切なサイズと形式に変換し、圧縮する
- ファイルの圧縮:HTML、CSS、JavaScriptファイルを圧縮する
- キャッシュの活用:ブラウザキャッシュを有効にして、再訪問時の読み込みを速くする
- 不要なプラグインやスクリプトの削除:特にWordPressサイトでは、使っていないプラグインを削除する
ブラウザ互換性の確認
異なるブラウザやデバイスでサイトが正しく表示されるかを確認します。ユーザーは様々なブラウザやデバイスでサイトを閲覧するため、幅広い環境での動作確認が必要です。
主要なブラウザ(Chrome、Firefox、Safari、Edge)と、古いバージョンのInternet Explorer(企業などではまだ使われていることがあります)での表示を確認しましょう。また、WindowsとMac、iOSとAndroidなど、異なるOSでの表示も可能な限りチェックします。
特に注意が必要なのは、JavaScriptを使った動的な機能や、CSS3の新しい機能です。これらは古いブラウザでは対応していないことがあります。必要に応じて、代替手段を用意するか、機能を簡略化することも検討しましょう。
サイト公開後にすべきこと
Webサイトの公開はゴールではなく、むしろスタート地点です。公開後も継続的な管理や改善が必要です。
アクセス解析の設定
サイトの効果を測定するために、アクセス解析ツールを設定しましょう。最も一般的なのはGoogle Analyticsで、無料で利用できます。
アクセス解析では、訪問者数、ページビュー数、滞在時間、流入元、離脱ページなど、様々なデータを収集できます。これらのデータを分析することで、サイトの改善点が見えてきます。
例えば、特定のページからの離脱率が高い場合は、そのページの内容や導線に問題がある可能性があります。また、モバイルからのアクセスが多いのにパソコン向けの設計になっている場合は、モバイル対応を強化する必要があるでしょう。
定期的な更新計画
Webサイトは定期的に更新することで、検索エンジンからの評価が高まり、リピーターも増えやすくなります。更新計画を立てて、継続的にコンテンツを追加しましょう。
更新の頻度や内容は、サイトの目的やリソースによって異なります。例えば、企業サイトなら月に1回程度のお知らせ更新、ブログサイトなら週に1〜2回の記事投稿といった具合です。
更新内容としては、新商品・サービスの紹介、業界の最新情報、お役立ち情報、社内イベントの報告などが考えられます。ユーザーにとって価値のある情報を提供することを心がけましょう。
セキュリティ対策
Webサイトは常にハッキングなどの脅威にさらされています。特にWordPressなどのCMSを使用している場合は、定期的なセキュリティ対策が必要です。
基本的なセキュリティ対策としては、以下のようなものがあります。
- 定期的なバックアップ:問題が発生した場合に復旧できるよう、定期的にデータをバックアップする
- ソフトウェアの更新:CMSやプラグインを最新版に保つことで、セキュリティホールを塞ぐ
- 強固なパスワード設定:管理画面へのログインパスワードは、十分に複雑なものを設定する
- セキュリティプラグインの導入:WordPressなら、Wordfence、Sucuri、iThemes Securityなどのセキュリティプラグインを導入する
また、SSL証明書を導入して、サイトをhttps化することも重要です。これにより、サイトとユーザー間の通信が暗号化され、情報漏洩のリスクが減少します。さらに、GoogleはSSL対応サイトを検索結果で優遇する傾向があります。
Webサイト制作でよくある課題と解決法
Webサイト制作では、様々な課題が発生することがあります。ここでは、よくある課題とその解決法を紹介します。
制作期間の遅延対策
Webサイト制作では、予定より作業が遅れることがよくあります。主な原因と対策を見ていきましょう。
遅延の原因としては、要件の変更や追加、素材の準備遅れ、承認プロセスの遅れなどが挙げられます。これらを防ぐためには、プロジェクトの初期段階で詳細な計画を立て、関係者間で共有することが重要です。
具体的な対策としては、以下のようなものがあります。
- マイルストーンの設定:大きな作業を小さな段階に分け、各段階の期限を設定する
- バッファの確保:予期せぬ問題に対応できるよう、スケジュールに余裕を持たせる
- 定期的な進捗確認:週1回程度のミーティングで進捗を確認し、問題があれば早期に対処する
- 優先順位の明確化:全ての機能を一度に実装するのではなく、重要な機能から順に実装する
また、制作会社に依頼する場合は、契約書に納期と遅延時のペナルティを明記しておくことも有効です。
コミュニケーションの取り方
Webサイト制作では、クライアントと制作者、あるいはチーム内でのコミュニケーションが重要です。誤解や認識のズレが生じると、手戻りや遅延の原因になります。
効果的なコミュニケーションのポイントは以下の通りです。
- 明確な指示:曖昧な表現を避け、具体的に伝える(「もう少し明るく」ではなく「青を#0000FFから#3366FFに変更」など)
- 視覚的な資料:言葉だけでなく、参考画像やスケッチなどを使って伝える
- 適切なツールの活用:メール、チャット、ビデオ会議、タスク管理ツールなど、目的に合ったコミュニケーションツールを使う
- 定期的な報告:進捗状況を定期的に共有し、問題があれば早めに相談する
また、対面でのミーティングが難しい場合でも、定期的なビデオ会議を設けることで、チームの一体感を保ち、コミュニケーションの質を高めることができます。
修正依頼の適切な出し方
Webサイト制作では、デザインや機能の修正が発生するのは自然なことです。しかし、修正依頼の出し方によっては、作業効率が大きく変わります。
適切な修正依頼のポイントは以下の通りです。
- 具体的な指示:「ここが気に入らない」ではなく「このボタンの色を赤から青に変更してほしい」など、具体的に伝える
- 理由の説明:なぜその修正が必要なのかを説明することで、制作者の理解が深まり、より適切な対応が期待できる
- 優先順位の明示:複数の修正がある場合は、重要なものから順に伝える
- まとめて依頼:小さな修正を都度依頼するのではなく、ある程度まとめて依頼することで、作業効率が上がる
また、修正依頼はできるだけ文書化し、口頭だけでなく、メールやチャットなどで記録に残すことも重要です。これにより、後から「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。
費用を抑えるためのポイント
Webサイト制作には一定のコストがかかりますが、工夫次第で費用を抑えることも可能です。ここでは、コスト削減のポイントを紹介します。
テンプレートの活用
一からデザインを作るのではなく、既存のテンプレートを活用することで、大幅にコストを削減できます。
WordPressなどのCMSには、無料・有料の様々なテンプレート(テーマ)が用意されています。有料テーマでも1〜3万円程度で購入でき、一からデザインを依頼するよりもはるかに安価です。
テンプレートを選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- 目的との適合性:ECサイト向け、ブログ向け、ポートフォリオ向けなど、目的に合ったテンプレートを選ぶ
- カスタマイズ性:色やフォント、レイアウトなどをどの程度変更できるかを確認する
- レスポンシブ対応:スマートフォンやタブレットでの表示に対応しているかを確認する
- 更新頻度:定期的に更新されているテンプレートを選ぶことで、セキュリティリスクを減らせる
テンプレートを使用しても、ロゴやカラーなどを自社のブランドに合わせることで、オリジナル感のあるサイトに仕上げることができます。
外注と内製の使い分け
全ての作業を外注するのではなく、自社でできる部分は内製することでコストを削減できます。
例えば、デザインやコーディングは専門知識が必要なので外注し、コンテンツの作成や更新は自社で行うといった使い分けが考えられます。特にWordPressなどのCMSを使用すれば、基本的な更新作業は専門知識がなくても可能です。
ただし、内製する場合は、担当者の時間コストも考慮する必要があります。本業の傍らでサイト管理を行うと、本業に支障が出る可能性もあります。コストと効果のバランスを考えて判断しましょう。
優先順位の明確化
全ての機能やページを一度に作るのではなく、優先順位をつけて段階的に制作することで、初期コストを抑えることができます。
例えば、まずは必要最低限のページ(トップ、会社概要、サービス紹介、お問い合わせ)だけを作り、アクセス解析などで効果を測定しながら、徐々に機能やページを追加していく方法が考えられます。
優先順位をつける際は、「ビジネス目標への貢献度」と「実装の難易度・コスト」のバランスを考慮しましょう。貢献度が高く、コストが低いものから実装していくのが基本です。
また、将来的な拡張を見据えた設計にしておくことも重要です。後から大幅な改修が必要にならないよう、拡張性を考慮した設計を心がけましょう。
まとめ
Webサイト制作は、準備段階から公開後の運用まで、様々な工程があります。要件定義、サイトマップ作成、ワイヤーフレーム設計、デザイン制作、コーディング、公開前チェック、そして公開後の運用と、それぞれの段階で押さえるべきポイントがあります。
特に重要なのは、最初の準備段階です。目的とターゲットを明確にし、必要な機能や情報を洗い出すことで、後の工程がスムーズに進みます。また、公開後も定期的な更新やセキュリティ対策を行うことで、サイトの価値を維持・向上させることができます。
Webサイト制作は一朝一夕にできるものではありませんが、この記事で紹介したプロセスを参考に、計画的に進めることで、目的に合ったサイトを作ることができるでしょう。